2010年7月 8日 (木)

「男はもうこれ以上苦しみたくない」

パリとミラノのメンズコレクションが終了し、各メディアで一斉に2011年メンズトレンドの総括がおこなわれている。

今年はケンゾーとロベルト・カヴァリが40周年、ドルチェ&ガッバーナのメンズラインが20周年、ラフ・シモンズが15周年、リカルド・ティッシによるジヴァンシーが5周年だったそうである。始めることもすばらしいが、続けるにはさらにたいへんな努力とエネルギーがいる。祝!

数ある総括記事のなかで、英「インデペンデント」7月5日付がもっとも興味深くまとめられていたように感じた。そのなかでも、とりわけ個人的に気になったのが、以下のトレンド。

・スコート(skort)。ショートパンツなんだけど、前面にフラップがついていて、スカートのようにも見えるというボトムである。コム・デ・ギャルソンが2008年あたりからスカートを出していて、トム・ブラウンもショートパンツを出し続けている。その流れが融合してきたような感じ? リカルド・ティッシ(ジヴァンシー)、ラフ・シモンズらがスコートっぽいものを提案している。 

・「男はもうこれ以上苦しみたくないのだ(I've become convinced that men don't want to suffer any more)」byクリス・ヴァン・アッシュ(ディオール・オム)。というわけで、ディオール・オムは、「レス・イズ・モア」(少なければ少ないほど、かっこいい)の袖なしVネックシャツや、ショールのような上着。シンプルに向かうトレンドは確実にあるようで、いつもはボリュームのあるコレクションを得意とするリック・オーウェンスも、「減量」感のあるバリエーションを提案。

あれこれ悩まず、スコートはいて性差の縛りからも自由になって、あっさりとシンプルに我が道を行こうとする男を、2011年男性像としてイメージしてしまった(あくまで個人的印象)。

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2010年6月29日 (火)

タキシード・ブルーマー

新しいアイテムなどもう出ようにも出ないのではないか……と思っていたのだが、イヴ・サンローランがクルーズコレクションで発表したスタイルが、気になった。

タキシード・ブルーマーである。

ジャケットはタキシード、ボトムがタキシードパンツ・・・なのだけれど、それが太腿丈のショーとパンツで、しかも、ブルーマーのように少しふくらみがもたせてある。

タキシードルックを20世紀のファッション史に刻んだサンローランならではの、21世紀的タキシードルックの提案。

文章で書いてしまうと奇異なイメージが思いかびそうだが、見た目の全体のバランスは、かなりいい。ショートパンツはすでに大流行しているし、ひょっとしてひょっとしたら、この新アイテムは、いいところまでいくのではないか?

さりげなく今後を見守りたい。

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2010年6月15日 (火)

「オリエンタル」が日本から中国・韓国に

ロンドンのセントラル・セント・マーチンズといえば、ファッション界のトップで活躍する高レベルのデザイナーを数多く輩出してきた名門デザインスクールである。ジョン・ガリアーノ、故アレクサンダー・マックイーン、ステラ・マッカートニー、クレメンツ・リベイロもここの卒業生。

その名門校の2010年の卒業コレクションでは、アジアのデザイナーの活躍が顕著だったという。英「テレグラフ」9日付けの記事。「インデペンデント」も同様の報道。

アジア、すなわち韓国、中国である。10年前は、モード界で「オリエンタル」といえば日本であった。現在では韓国、中国がメインで、日本ではないのである。

韓国のRok Hwangは、セリーヌに入社することが決まり、同じく韓国のJung Sun Leeのコレクションは、ハロッズが購入。このふたりはMAコース。

BAのショウでは、中国のYi Fangがロレアル・プロフェッショナル賞を受賞。

アメリカではすでに、アレクサンダー・ワン、ジェイソン・ウー、フィリップ・リム、デレク・ラムなど、アジアのバックグラウンドをもつデザイナーがめざましい活躍で、21世紀のモードを牽引している。

日本のファッションは発信のしかたが違うから、と言われれば、まあそれまでなのだが、10年前と比べるとたしかに日本のデザイナーが話題にのぼることが少なくなっている感も否めず、やや、さびしい気もする。

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2010年3月26日 (金)

箔デニムの妖しい光と影

ミスアシダ2010-2011秋冬コレクション@恵比寿ガーデンホール。

今すぐ着たい・・・と思わせるチャーミングなリアルクローズの数々。光沢のバリエーションが印象に残った。テーマは「シャドウ」であったのだが、影にひきたてられていた光の残像が美しかった。そうやって光を表舞台に押し出す影の使い方がうまかったのかな。

レザーの濡れたような艶、ヴィスコースジャガード地の、宇宙の星を連想させる光のグラデーション、プラスチックな光沢、ラメ入りコットンアセテートクレープが生む、ダークゴールドの陰影ある光、地模様やシースルー素材を織り交ぜた、遊び心あふれる光と艶、チュール越しに見る奥ゆかしい光などなど。手袋にも未来的な光沢素材が使われていて、モデルの手に視線が誘われる。

不況が暗い影を落としている時代だから、好況期に全盛だった「キラキラ」「ブリンブリン」の誇示は、もう空気から浮きあがった哀れなものにしか見えない。でも女はやっぱり光りものが好きだ(笑)。影の時代における光の模索、という点で、影と表裏一体になった光を演出した今回のコレクションは、とても時代の雰囲気に合っているように見えた。

さまざまな新しい素材のなかでも、赤く妖しい光沢を放つデニムに魅了された。ショーが終わってからデザイナーの芦田多恵さんにうかがうと、デニム地の上から箔をはってつくる素材とのこと。日本が世界に誇る岡山産のデニムである。デニムのカジュアルな雰囲気に、モードな品格とおとなの陰影が加わった、今の空気に似つかわしい印象。デニムブームはまだまだ続くと思われるので、新鮮味を感じさせるこの素材はヒットするのではないか?

ツイード、ファー、フリル、レザートリミングといった細部のアレンジ、後姿に目が釘付けになるお茶目でモダンなカッティングなど、職人技も光っている。

おみやげにいただいた、赤坂のNeyn(ネイン)のクッキーがまた個性的な味わいだった。甘さ抑え目で、スパイスや素材の複雑な余韻が広がっていく。芦田多恵さん監修の、ミスアシダ・エクスクルーシブのスイーツだそうである。スイーツにもファッションと同様、流行がある。まだあまり知られていないスイーツというのは、けっこうスノビズムを刺激するものである(笑)。それをふまえて、こういう製品をいち早くコラボで「作り出していく」姿勢もまた、モードの送り手らしいなあと感心する。

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2010年1月12日 (火)

カーディガンの進化

◇「フラウ」2月号発売です。連載「ドルチェを待ちながら」で、最近、海外メディアに登場しているワード、「ラグジュアリー・シェイム(贅沢は恥)」に触れています。機会がありましたらご笑覧ください。

◇メンズモードの春夏のトレンドとしてカーディガンが浮上、という「フィナンシャルタイムズ」の記事(1月8日付)。ダブルブレストであったり、ショウルカラーがついたタキシード風味の味付けをしてあったりするフォーマルなカーディガンを、フェラガモ、ダンヒル、ポール・スミスなどのブランドが出しているとのことである。

模範とすべきモデルは、カッタウエイカラーのシャツにタイをあわせた濃紺(黒?)カーディガン姿で現れたダニエル・クレイグ。一方、同じアイテムでも茶色を選んだデイヴィッド・ベッカムは揶揄の嵐に見舞われた。カーディガンであっても引退感・窓際感を表現してはいけないということですかね。現役ばりばり感あふれる、21世紀型カーディガン。日本までこの流れは押し寄せるのかどうか。

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2009年10月24日 (土)

匠の細部と、カワイイ全体

ミス・アシダ2010年春夏コレクション@ジュンアシダ本店in代官山。

若々しくてまばゆいほどのかわいらしさ満開。ただ「若かわいい」のではなく、上質な別格感も「モードな攻め」感もある、おしゃれ好きにはたまらないかわいらしさである。

そんな「ミス・アシダらしさ」を生む秘密は、おそらく、高度な職人技が駆使されたディテールと素材(服地)選びにある。今回、目をひき、とりわけ印象に残ったのが、以下の3つの点。

1.シーム(縫い目)を装飾のように演出する細部 

2.袖と身頃の境界がない不思議な上半身 

3.幼稚園のときにカラーティッシュでつくった花を思い出させる、立体感のある大きな花がたっぷりとあしらわれた生地。

ショウが終わってから、それぞれについてデザイナーの芦田多恵さんに伺ってみたところ、こんなことがわかる。

1.ダブル(両面)になっている生地を、両面それぞれのよさを見せられるよう、あえて表・裏と切り替えながら縫い合わせ、その縫い目をときほぐし、遠目には装飾のラインに見せるよう演出したとのこと。最後に登場したマリエ(ウエディングドレス)にもこのテクニックのバリエーションが使われていた。白いシルクサテン生地のアクセントとして、シームが何本か走っているのだが、そこにビーズが埋め込まれているのである。それが柔らかく光り輝き、まるでドレスのラインに沿って光の川が流れていくように見える。

2.たっぷりとボリュームのある袖とボレロが一体化したようなトップスは、多恵さんが「ボレロスリーブ」と名付けているミス・アシダのオリジナルだそうである。袖だけをたっぷり膨らませると、腕を上げた時に脇下がもたつくが、このデザインだと腕を自由にすっきりと動かすことができて、脇下すっきり。袖のボリュームを楽しめながら、着心地がラク。なるほど、こういう発想があったのか~と感心する。

3.大きな花と見えるのは、エンブロイダリー(刺繍)だそうである! ここまで立体感のある素材の登場にちょっとわくわくする。これが全面にあしらわれたスカートは、かなり楽しい。ミニでタイトであれば、上半身を真面目なジャケットでまとめて仕事着としてもいけるかも?などと思わず妄想が入る。

こういう細部が悪目立ちすると「オタクな服」になってしまうのだが、ミス・アシダの場合、それが絶妙の配分であしらわれ、シックで一般ウケのいい配色の全体のなかにとけこんでいる。匠の細部と、まとまりのいいキュートな全体。結果、「かわいいのに、格が高い」という印象が生まれている。

細部と全体の関係については、ほかの分野においてもあてはまることかもしれないなあ、と楽しく考えさせられたコレクションだった。

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2009年10月16日 (金)

力強い美のシャワー

ジュンアシダの2010年春夏コレクション@ジュンアシダ本店in代官山。

生地の素材感を生かした優雅な造形、心躍るリッチな色彩、シャープでどこか遊び心もあるカッティング、すべてが完璧なバランスである。光を受けて艶やかにモデルを引き立てていたシルクのシャンパンゴールドのイヴニングにもため息。モデルの冨永愛の強いまなざしがドレスの迫力をいっそう引き立てている。美の王道を行き、遠慮なく品よく「これを着ている人が主役」オーラを発して美しい服の数々。ザ・ジュンアシダワールドを堪能する。

今回の「目玉」として発表されたのが、ティアードパンツ「ボンブー(Bambou)」。現在ティアードスカート(生地が幾重にも切りかえられた、段々スカート)が流行しているが、あのパンツ版といえようか。立体的に切り替えられているのに、もたつきが全くなく、まっすぐでしなやかな竹(=ボンブー)のようにも見える。色も、白あり黒ありグリーンあり、丈もロングあり七分ありキュロット風あり、とバリエーション豊かである。パンツでティアードなんて、ちょっと思いつかなかった。よく考えたなあ。マネするところが出るんでは、と心配したが、意匠登録出願中とのこと。そうそう、そうやって積極的にデザイナーの権利を守っていってほしい。

個人的には、イヴニング仕様の、段々生地の先にラインストーンがついているバージョンが好みだった。これ、きっと着るぞ~と心に誓う。でも5キロはやせないと「竹」にならなくて服に申し訳ないだろうか、などとも考えたりする(・・・)。

会場で、「ハーパースバザー」で連載をしていたときにお世話になったムラカミ元編集長とヒガシノ元副編集長にばったり会う。ふたりともかっこいいエイジレスのスーパーキャリア美女である。ムラカミさんは還暦のお祝い会をなさったばかりと聞いたが、今日はモードなミニスカートで決めていらして、会うたびに「大人のかわいい」を進化させている。こういう、年を重ねてますます美のパワーを味方につけている女性のお手本に会うと、ほんとうに元気がでる。

というわけで、今週は落ち込みもあったものの、締めくくりに多彩な美のシャワーを浴びてエネルギーのおすそわけをいただいた。美しいものは理屈ぬきに生きる気力を与えてくれる、とあらためて実感。

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2009年10月 2日 (金)

ただ流行っているというそのことじたいが

2010年春夏に向けて、ニューヨーク(9月10日~17日)、ロンドン(9月18日~22日)、ミラノ(9月23日~30日)に続き、パリ・ファッションウィークが開催されている(9月30日~10月8日)。パリはやはり格が違うようで、各国の報道も熱を帯びている。ひとりひとりのデザイナーの個性がくっきり伝わってくる。いまはほぼ同時にインターネットで動画中継を見ることができる。舞台裏まで同時に中継するブランドまで登場している。便利な時代になった。でも同時に、ファストファッションが瞬時にこれをパクることが問題にもなっている。

もっとも旬かもしれないバルマンのクリストフ・ドゥカルナン。肩強調のバルマンジャケットを流行させたことで注目をあびるが、こんどは穴あきTシャツである。虫に食われたように、Tシャツにぼろぼろと穴があいている。計算されつくした穴あきなんだろうが、どうなんだろう、これ。流行っちゃうんだろうか。流行っていうのは、美醜善悪まったく無関係に、「ただ、それが流行っているというそのことじたいが、よいのだ」といういかがわしい理由で力をふるってしまうことがある(そんな人間の行動のいかがわしさを暴いてみせるのもファッションの面白さである)。バルマンジャケットの勢いにのって、くるのか、穴あきTシャツ?

やっぱり絶対楽しいのが、ディオールである。インスピレーション源はフィルムノワール。ローレン・バコール風ヘアメイクの美女が、現代風エロスを効かせた40年代風タイトなシルエットのドレスで登場。最後にガリアーノがどんなコスプレで出てくるかというのは常に関心の的だが、今回はボギーに扮していた。いまだに20世紀の回顧展をやっているのかという批判は当然想定されるのだが、でもガリアーノのショウは見ているだけで無条件に笑顔になれる。旺盛なサービス精神に圧倒されつつ癒される、大好きなデザイナーの一人。

そしてパリコレは続く。

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2009年7月15日 (水)

偶然にしては、あまりにも

ファッションビルでも、タクシーの中でも、カフェに入っても、マイケル・ジャクソンが流れている。80年代が戻ってきたかのような錯覚をおぼえる。

今年の初め、「80年代リバイバル」がくる、と多くのファッション記事が論じていた。本ブログでも、バルマンジャケットなどのことに触れつつ、ちらっとその話を紹介している。バルマンの肩強調ジャケットは、マイケル・ジャクソンの舞台衣裳を思わせるようなもので、2月、3月には、多くの「セレブ」が競い合うように着ていた。もちろん、マイケルが故人となるずっと前の話である。

いま、マイケル追悼の意味で、80年代のBGMだった音楽が流れ、マイケル風ジャケットの人気が高まっている。

ことし初めに予想された80年代ブームと、現在の80年代全盛のムードは、もちろん、意味はまったく違うもので、ほとんど偶然の一致のようなものだ。

でも、ほんの少し、ひやっと空おそろしいものを感じる。

ファッションの変化は社会の変化に先行する。その後に続くできごとを予兆することがあるのだ。

マイケルが故人になってしまうだなんて、さすがにバルマンですら予想していなかったであろう。だが、この偶然の一致、あとから「歴史」として、記録として眺めてみた時に、やはりただの「偶然の一致」とすますことなど到底できないような気も、ほんの少し、するのである。マイケルが偉大なポップスターだっただけに。

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2009年6月 2日 (火)

ラクロワ、破産

クリスチャン・ラクロワが破産の申し立てをしたと報じられた。

大胆で過剰な色づかいや、ぱきっと構築的なシルエットは大好きだった。3月に訪れたシンガポールの美術館では、ラクロワの舞台衣裳展をやっていて、舞台衣裳家としての才能にも敬服していたのだが。浮世離れした華麗な服は、不況の大波押し寄せる時代には生き残れなかったようだ。現実はきびしい。でも、稀有な才能、またいずれ浮上してくれることを祈る。

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