2011年12月24日 (土)

「キライなもの」にチャレンジさせる自信

粛々と業務をこなしたあと、to respect myself のためにちょっくら現実逃避をしたくなった。子どもたちは旅行に行ってしまったので、つかの間の解放ならば許される。イヴを一人で過ごすというシチュエーションでも気が滅入らないための絶対必要条件は、「クリスマスソングが流れていない」こと、かつ、「クリスマスのデコレーションなんてかけらもしてない」こと。そんな心優しい場所は、私の狭いテリトリーのなかで知る限り、一か所しかない。

期待を裏切らず、いつもどおりの骨太なポリシーであたたかく迎えてくれた「ル・パラン」で、ヘミングウェイが愛したというシャンパン+オレンジのカクテル(とある有名なパリのカフェの名前がついてた……忘れてしまった)。これがイチゴととてもよく合って、華やかな気分になる。

(追記:その後、名前を再度教えてもらった。モンパルナス界隈にあるカフェ「クロズリー・デ・リラ(Closerie des Lilas)」だそうです。ヘミングウェイはこのカフェで『日はまた昇る』を書いたらしい。芸術家の名がどんどん流れてくるHP http://www.closeriedeslilas.fr/ )

締めに「アレキサンダー」というカクテル。エドワード7世が、デンマークから嫁いできた王妃アレクサンドラに捧げたのでこの名前になったそう。ブランデー+カカオリキュール+生クリームの、かなりリッチな、どちらかといえば「ケーキ」のようなイメージのカクテル。ここのマスターバーテンダーの本多啓彰さんは、私が「甘いものキライ」なことを知っていて、あえてこういうのを出してチャレンジさせるのだな。すごい自信である。で、飲んでみると、偏見がくつがえって、おいしさに感動する。

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「酒とバラの日々」でジャック・レモンの妻がアル中になるきっかけになるカクテルが、まさにコレなんだそう。なるほど、ケーキのように甘やかしてくれる印象がある。

かすかなシガーやら葉巻の香りの中、深く、こっくりとした時間を過ごし、少なくとも、自分へのrespectは失わずにすんだ……(かな)?

本日の記憶をよみがえらせる音楽。Christophe Rousset 演奏による「バッハ・ファンタジー」。琴線にふれる、という表現をつい思い出してしまうようなアルバム。ありがとう。

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2011年11月21日 (月)

「自由と平等の中に歴然と存在する階級社会」

Signature 12月号、葉山孝太郎さんの連載「スパークリングなスクリーン」、第8回。甘くて不条理な身分違いのロマンスの話(『サブリナ』リメイク版、シドニー・ポラック監督)を、登場するクリュッグのシャンパーニュにからめて。

クリュッグの位置づけ、クリュッグの描写がうまい。描写が難しいお酒だが、ああ、こう書くのか。「クリュッグは、シャンパーニュの中で最も高価で、マニアっぽく、男臭い。日本の俳優でいえば、三船敏郎的な存在だろう。フル・ボディで、シェリー酒のような酸化した風味がある。好き嫌いがはっきり分かれるというより、クリュッグ側が飲み手を選ぶのだ」

『エリゼ宮の食卓』(新潮文庫)に書かれている情報として、こんな紹介もある。エリゼ宮で海外のVIPを招いて大統領主催の晩餐会を開くときには、相手によってワインの銘柄を露骨に変える、と。「昭和天皇がエリゼ宮に招かれたとき、敬意を払ってドン・ペリニヨンが出たが、短命内閣に終わると世界中が予想した羽田首相が渡仏した際、名もない南仏のワインを出し、『何の期待もしていない』とのメッセージを送った。このエリゼ宮で最高ランクのワインがクリュッグだ。クリュッグは、フランスの最重要国、イギリスのエリザベス女王が国賓待遇で来るときなど、特別の要人にしかサービングされない」

で、クルッグしか飲まない伊達者を「クリュギスト」と呼ぶそうだ。エリザベス2世にココ・シャネル。

映画の結末と、フランスにおけるこのシャンパーニュの位置づけのからませ方が知的で、酔える。「自由と平等の中に歴然と存在する階級社会。その中で階級を超えたロマンスが実を結び、クリュッグを飲んで様になる風格を備える。これが究極の『自由と平等』かもしれない」

(ちなみに、ヘップバーン版「サブリナ」では、モエ・シャンドンだったとのこと)

昨日の健次郎氏の話にもあったけど、そうそう、「階級社会」であることが歴然としているコワイ国、フランスは、建前上は「自由と平等」の国なのだった。こういうややこしいところで、究極の自由と平等を手に入れるには、相当な<ドラマ>が必要なんですね…。

クリュッグを飲んでサマになる風格。これを備えてクリュギストに名を連ねられたら、それこそお酒好きにとっては最高の栄誉だろう。

その前に、「グラスを2個ポケットに入れ、未開封のクリュッグを1本もってパーティを抜け出す」、そんなシーンに巻き込まれてみたいもの(笑)。

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2011年11月17日 (木)

キティラベルのボジョレー・ヌーヴォー

ワインを欠かした日など一日たりともないけれど、ボジョレー・ヌーヴォーなどは別にどうでもよかった。薄くて高い、お祭り便乗品ぐらいにしか思ってなかった。

でもこれは特別~。キティラベルのボジョレー・ヌーヴォーである。

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便乗といえばこっちのほうがワル乗りのはずなんだけど(笑)、好きなものだとつい甘くなり、嬉しくなってしまう。キティ愛を公言していたことでご縁ができたサンリオの方から送っていただきました。しばらく飾っておきます。ありがとうございました!

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2011年11月15日 (火)

Everything is fine and dandy.

毎日楽しそうでけっこうですね、と皮肉交じりに言われることもあるが、多くの人々の例にもれず、生活の半分以上は苦い思いをしたり、辛抱したりすることでなんとか成り立っている。ただ、知らない人まで暗い気持ちにさせたくはないので、明るい話題しか口にしないし、書かない、というだけのこと。他人の不幸話やみじめ話は蜜の味、ということもあるけれど、それはまた別のカテゴリーでの話。

ただ、ビターな思いというのはそんなに嫌いではない。苦さを味わえばこそ、嬉しいことがあったときのありがたみも増すし。苦い思いがすっかり親しいものになっているということもある。

忘れかけていた過去のビターな思いと直面する必要に迫られた夜。シラフでは行けないなあと思って直前に立ち寄ったいつものバーで、バーテンダーが出してくれたカクテルが、"Fine and Dandy "であった。 「あまり女性にお出しするカクテルではないのですが」とのお断りつき。ジン、コアントロー、レモンジュースに、ビターズが1ダッシュ。フレッシュで苦みが強い。芯のある苦みが心地よい。

Fine and Dandyというカクテルが存在することすら知らなかった。Fine and Dandy、1930年代にブロードウェイで歌われて、ジャズのスタンダードにもなっているらしい。

英語のイディオムとしても使われる。excellent と同じような意味で使われるが、そこには皮肉がこめられる。'How are you?' と聞かれたときに、'Everything was fine and dandy, until my girlfriend left me.' (彼女にフラれるまでは、何も言うことはなかったね)とか。

'Our boss suggested  going abroad on vacation'(上司、休みに海外に行くんだとさ)という話がでたときに、'That's fine and dandy for him, but what about the poor assistants like us?' (そりゃけっこうなことで。でもわたしらビンボー人は)とか。

楽しそうですね、などと言われたときに、どんなにみじめなことがあった後であったとしても、返す言葉としては、なかなかいいようだ。Yes, everything is fine and dandy.

ダンディズムの本なんぞ書いていながら、こんなdandyの使い方も今さらはじめて知った。ほんとに、知っているべきことに上限というものがない。なさすぎる。

それにしても、このバーがすごいのは、いつも心の状態にあったカクテルを「処方(prescribe)」してくれて、新しい発見や知識を与えてくれること。偶然が重なってるだけかもしれないけど(笑)。たしか、カウンターのアンティークっぽい酒棚にはPrescriptionというような文字が見えた記憶があるが、本来、お酒とはそういうものであったかもしれないな、と腑に落ちる。

ちょっとだけ覚悟していた過去との直面のほうは、苦みなどすっかり薄まって、水みたくさらさらの無味無臭になっていた。ほっとすると同時に、これはこれで、やや拍子抜け。

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2011年10月28日 (金)

NON SUFFICIT ORBIS

マヤ暦(旧暦)最後の日、とかでなにげに騒々しい。そういうたぐいの言説を信じるタイプではまったくないのだが、でもしかし、「明日がないかもしれない、最後の日」に何をするか?ということを考えるにはよい機会である。

スティーブ・ジョブズの、あまりにも有名になってしまった例の演説でも「今日が最後の日だとしたら何をするか?と自問する」というような話があったが、暦が最後になってしまうのと、自分だけが最後の日を迎えるのとでは、「最後の感覚」にも若干の違いが生まれるような気がする。

で、暦が最後の日であるとすれば、自分は何をするか?と考えてみたときに、行きついた答えは、「今日、やるべきことになっている義務と任務を淡々とこなす」ということだった。いつもより2割増しぐらいに丁寧に(いつも丁寧にやっているつもりだが、それをさらに極めるつもりで)、義務を遂行したら、なんだかものすごく気分のいい日になった。

明日がないかもしれない日の締めくくりにはやっぱり美酒よね、ということで、いつものバーで「この世でいちばんおいしいお酒」と注文してみたら、バーテンダーが出してくれたのが、ビンテージグラスに注がれたカルヴァドスだった。「暦が終わるからといって世界が終わるわけではなく、明日からはニュー・ワールド・オーダーに代わるということらしいですよ」という、粋なセリフつき。カルヴァドスはりんごのブランデーのようなもの。そしてりんごは「完結」のシンボルでもある。素敵すぎる解釈。

「マヤ暦の終わり」とされている日はまだいくつかあるようだ。ま、こんな終わりならあと何回かあってもいいかな。

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壁に飾られた「(ジェームズ・)ボンド家の紋章」(007ファンがシャレで作った、でも本格的な紋章で、お客さんからバーへの寄贈品)。 ラテン語で書かれたモットーは、NON SUFFICIT ORBIS。すなわち、The World is Not Enough。ホント、世界なんて一つじゃ足りないわ(笑)。

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2011年10月22日 (土)

おもてなしを成功させる三角形

講演終了後に訪れたニューオータニのメインバー、カプリ。壁には画家ポール・アイズビリの連作が飾られている。なかなかよいムード。

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バーテンダーとのおしゃべりで、バーテンダーとホスト(お金を払う男の客)とゲスト(女)の関係の話になる。

この三角形がうまく成立すると、おもてなしは成功する、と。バーテンダーが女性、とりわけ美人だった場合、ゲスト(女)が嫉妬したりすることが多いので、なかなか三角形が成立しにくいのだとか。女性バーテンダーとゲスト(女)だけで盛り上がってしまった場合にしても、金を払う男であるホストがおもしろくない……。

女性バーテンダーばかりというのが売り物の外資系ホテルのバーもある。あれはあれで評判だが? ……女性バーテンダーは現在、増えてきたが、重い物をもたなくてはならなかったり、酔客相手の商売であったり、上下関係が厳しかったりするので、一人前になるまで育てるのがかなり難しい。ようやく一人前に育った彼女たちをひきぬいていったことは、かなりの顰蹙もの、なのだそう。

また、ホテルのバーと街場のバーとのちがい、というのも教えていただいた。ホテルのバーでは、「同じメニューをずっと置いている」ということも大切なのだとか。何十年か経って訪れても、「あの時に飲んだ、あのカクテルが、まだある」ということ、記憶に残るカクテルがあるということが、大事なのだ、と。お洒落すぎない、若干の「どろくささ」もホテルのバーにはあったほうがよい、と。そういえばこのホテルには「トレイダー・ヴィックス」がまだ健在で、しかもそこにはいまもなお、あの「マイタイ」がメニューにあるという。20年前にここで結婚式を挙げたカップルが再訪しても「あのカクテルをもう一度飲める」のだ。それは感慨深いだろうなあ。

そういった状況を大切にするなかでも、新しいカクテルは出し続けているが、似たようなカクテルでも、流行りのネーミングで印象が変わることも多い。ネーミングの周期はだいたい三年。「三都物語」が三年前に流行ったとすれば、こんど巡ってくるときには「三栗物語」になるとか(笑)。

などなど、話も尽きず、記憶に残る豊かな時間を刻ませていただきました。ありがとう。

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2011年9月18日 (日)

「どんな時も、そばにいてくださいます」

◇金曜に、「サライ」連載記事のため、お台場のサントリー本社へシングルモルトの取材に行く。スピリッツ事業部の伊藤洋次郎さんに、シングルモルト初級者にもわかりやすくお話いただいた。広報部の日色さん、三上さんにもお世話になりました。

記事を書くときに心がけているのが、「読者に恥をかかせない」こと。(「サライ」の姿勢でもある。)知っている人にとっては常識になっていることでも、知らない人はほんとうに何も知らない。そこをすっとばして専門用語を多発すると、読者は取り残されたように感じてしまう。

サントリーでは、初心者レベルである当方の「ど初級」な質問にも丁寧な対応をしてくださって、「相手に恥をかかせない」ためにどのようなことばを使うべきか、ということもあわせて学ばせていただいた。ありがとうございました。

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お話はたっぷりうかがったが、そこで試飲したわけではなく、やはり実際に意識的に味わってみなくては記事は書けんと思って、ちょこっと「ル・パラン」に立ち寄ってみる。葉巻やパイプをやりながら男一人でシブく飲んでいらっしゃる素敵すぎるお客様たちのご様子も観察しつつ、マスターの本多さんから、シングルモルトについて「語る」にあたり、バーという「現場」において決定的に重要なことを示唆していただく(ふつうに「現場」になじんでいる方には、なんだそれしきのこと、という程度の「常識」にすぎないかもしれない)。詳しくは本誌にて。本多さんはとりたてて饒舌というわけではないが、さまざまな文化に通じていて、さりげなく核心をつく一言を返して「はっ」とさせてくれる、酒場の教養人。

◇酒つながりで、SIGNATURE10月号の、葉山孝太郎さんのエッセイ。映画「トゥルー・カラーズ」に出てきたシャンパーニュのSALONを解説。映画も観たくなったし、サロンも飲んでみたくなる。商品写真に添えられたコピーも秀。

「シャンパーニュの基本は、いろんな年の白黒葡萄をブレンドすること。老若男女合唱団風だが、サロンは単一年の白葡萄だけしか使わない。女性だけの宝塚歌劇団のように華麗で洗練の極致。一生に一度は飲まねばならない」。

……って、一本42000円。高っ。

◇同SIGNATURE誌の伊集院静さんの巻頭エッセイから、気になった言葉。

「私はかつてカソリック信仰をもつ妻に、神が君たちに何をしてくれるのか、と無神論者の立場で尋ねたことがあった。彼女は答えた。『何かをして下さったということはありません。でも、どんな時も、そばにいてくださいます』」

とくに何もしないでも、「どんな時にも、そばにいてくれる」と感じさせてくれる人やモノや音楽や本やワインに思いが及んでしまったのは及びすぎ…?

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2011年8月27日 (土)

レトロな王道を演じるプロフェッショナリズム

素敵なバー体験、もう一軒は、木曜日に。新宿の京王プラザホテルの地下にある「ブリヤン(Brillant)」。本命は高層階の「ポールスター」だったが、いまは、金曜と土曜しか開けてないのだという。震災後の影響と、節電のため。だいぶ客足は戻ったそうだが、京王プラザにはバーが多いので、できるだけ電気や人手の無駄を省くためにこのようにしているとのこと。ホテル業界も必死にがんばっているのだ。

なぜ京王プラザかというと、2年ほど前にホテルバーメンズ協会主催のカクテルコンテストの審査員をしたときに、京王プラザが、歴代の優勝者を多数輩出していることで有名なホテルであることを知ったのである。そのときに私が花丸をつけたカクテル「紅(くれない)」も、ふたを開けてみると、京王プラザのバーテンダーが作ったものだった(彼はその年のチャンピオンになった)。

この日は、ホテルバーメンズ協会にも関わっている「日本マナープロトコール協会」の理事、明石伸子さんとともに訪れた。明石さんはお仕事柄、ホテルのバー事情に詳しく、ホテルマンにもお知り合いが多いので、さまざまなホテルのバーのスタイルの差異などを教えていただきながら、一味違ったバー体験を楽しむことができた。

京王プラザのバーテンダーは、一目で「あ、この人はバーテンダーだ」とわかる特徴的なヘアアスタイルをしている。なでつけた7×3分けか、リーゼント。やや時代遅れとも感じられる、このレトロなスタイルを守り続けることが、京王プラザの伝統のひとつ。

非日常的なバーという空間を演出するのにもっとも大切な要素は、「人」である。そこで働く「人」の独特のヘアスタイルは、プロ意識の証。そんな考え方が徹底しているので、レトロなスタイルが、いっそ、すがすがしく感じられる。

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実はホテルマンのヘアスタイルには、名前がある。「オークラカット」という。7×3の刈り上げ。床屋さんで「オークラカット」と言うと、そういう髪型にしてくれる。

無駄のないきびきびした動きが小気味よいバーテンダーのひとり、石部和明さんに、「そのレトロな髪型、好みなんですか?」とあえて聞いてみた。

すると石部さんのお答え。「いや、ホテルの外の地下道で私とすれちがうと、たぶんわかりませんよ。髪もどちらかといえば、ボサボサで。ホテルで働くときはバーメンをこの髪型で演じてるんです」。

でも、時代遅れでイヤじゃありませんか? とまたしても酔いに任せてぶしつけな質問をしてみた。「そうですね、外資系のホテルにいくと、バーテンダーは短髪にツンツンの髪だったりしますね。リーゼントは、外国人に対しては威圧感を与えるようで、あまり好まれないこともあるのです」。

でも、あえてこのオールドファッションなスタイルを守り続けているのである。なぜならば、「これが王道」だから。

とはいえ、他のホテルにはそれぞれ、そのホテルが「王道」と考えるスタイルがあるようだ。シェイカーの振り方にしても、たとえば、オークラには「オークラ振り」と呼ばれる振り方がある。シェイカーの向きが、通常とは逆なのだそう。

石部さんは、よく聞いてみると、なんと東京都のカクテルコンテストで優勝した経験をお持ちだった。チャンピオン・カクテルの名は、「桜舞(おうぶ)」。このベテランのバーテンダーに、バーで素敵に見える男の振る舞いとは? と聞いてみる。

「ほかのお客様に対してマナーを心掛けている人ですかね。そんなお客様は大事にしたいと思います。それから、知ったかぶりはしないほうがいいと思います。通ぶったり、知識をひけらかしたりするのは、あまりかっこいいことではありませんね。こちらはお酒のプロなのだから、私たちバーテンダーを上手に使って、バーテンダーの力を発揮させてくれる男性の方は、素敵ですね」。

「それから、女性とおふたりでいらっしゃる場合、多くの場合、女性が一枚うわてであることが、カウンター越しに見ると、よくわかります(笑)」。

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ホテルバーメンズ協会員のバッジ。やはり雄鶏(Cock)なのであった。

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「マティーニは、ゆっくりと時間をかけてからませていく」

今週、縁あって、素敵なバー体験を、たまたま二度もさせていただいた。まずは一軒目、新宿三丁目に隠れ家のように潜んでいるバー、「ル・パラン(le Parrain)」。

古い洋館の扉のような重厚なドアを開けた瞬間から、19世紀ヨーロッパの貴族のお屋敷に迷い込んだような錯覚につつまれる。

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マントルピースの上にはさりげなく、ゴッドファーザーや007のイメージにつながる本やグッズなども置いてあり、そういえば、パランとは、「ゴッドファーザー」を意味するフランス語であったと思い出す。化粧室にいたるまで完璧な空間で、非日常の心地よい緊張感と寛ぎを演出してくれる。インテリアは映画のセットを手がけている会社によるものだという。

店長の本多啓彰さんがつくるカクテルがすばらしくおいしい。とりわけ、ドライ・マティーニは、期待をうれしく裏切る豊潤さで、一口ふくむたびに、新しい喜びがわきあがってくる感じ。今まで飲んでいたマティーニはいったいなんだったのか、と思うくらいの衝撃だった。

本多さんにおいしくマティーニを作るコツを聞いてみると、「ゆっくりと、時間をかけてからませていき、とろみをだす」。これだけは、ジェームズ・ボンド流(sheken, not stirred)ではないほうがよいようだ(笑)。英語のstirにしても、こういう官能的な訳語にすると、夜の雰囲気が出ていいなあ、と感心。「かきまぜる」じゃあ、どうもね。

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さまざまなビンテージグラスが用意してあるが、たまたま私のマティーニが注がれたグラスは、雄鶏(Cock)が手書きしてあるうえ、グラスの中央にリンゴがオブジェとしてくっついている楽しいグラス。雄鶏は、Cocktailの象徴。でもリンゴはなぜ?

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時間がそこだけゆっくりと静かに流れているような、大人のバーだった。実は、このバーにはぜひとも行かねばなりません、という勢いでご紹介くださったのは読者の方で、マスターの本多さんも私のダンディズム本を持っていてくださった。恥ずかしながらも、こういう予期せぬシブい出会いに恵まれたこと、しみじみとうれしく、感謝します。

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2010年6月 4日 (金)

新しい世界に導いてくれるのは、「ご縁」

◇「ワイン王国」7月号、巻頭アペリティフで、エッセイを書いています。ペリエ・ジュエの会でのご縁つながり。ワインの話を活字で書くのはほとんどはじめてのことで、肩に力が入りすぎて(?)「このドシロウトは!」とあきれるようなハズカシイ話になってしまいましたが。機会がありましたら、寛大なお気持ちで、ご笑覧ください。

仕事も生活も、思ってもいなかった新しい世界に導いてくれるのは、ほかならぬ「ご縁」であるなあ、とあらためて実感。

◇「成城石井」にて恒例の、空クジなしのシャンパンくじ。3500円ほどの投資で、最低でもモエ。最高でドン・ペリ。

もちろん参加。

で、ひきあてたのは。

金賞2本のうちの1本、ドン・ペリニオン2000年。

何百年に一度であろう幸運に、感謝・感涙。

「いままでワインくじに投資してきたお金でとっくにドンペリ何本か買えたんじゃないのお?」とは畏友サツキさんのツッコミ。

いろんなことをトータルにかんがえれば、プラマイゼロになってるのだろう。とりあえず今は酒神バッカス様に感謝。

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