階級なき社会の、陰湿で憐れな階級意識
林真理子『下流の宴』(毎日新聞社)。読み始めたら止まらなくなって一気に終りまで。中流から「上」に行きたい人のいやったらしーい階級意識を書かせたら林さんは絶妙にうまい。福原家的な人々の、きもちわる~い心理描写(←筆力をホメ)に、バーキンを他人に借りてまでファッション誌の読者モデルに出たがるというあんなこんなの事例が重なって、つい、笑いが。
下流だの上流だのといった狭い枠のなかだけでしか考えられず、見栄をはってきた人たちが迎える、皮肉な結末。「下流」「育ちが悪い」とさげすまされたタマオの一発逆転の過程も、ちょっと痛快。関係ないけど、私もご立派な方に「ファッションを学問にするなんて、カス以下」と嘲笑されたことで、けっこう踏ん張れた(笑)。嘲笑を真正面からぶつけられることも、あとから考えれば、悪くないかもしれない。必死にがんばっていると手をさしのべてくれる人が出てくるあたりとか、なにかを達成して別のステージに行くと、周囲の人間関係が変わっていくあたりなど、タマオの話にはしみじみするところが多かった。
現実の日本の「下流」社会の断片もなまなましく描写されていて、現代の空気の一部を確実につかんで活字にしてみせたような一冊。
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