「絶望と、悲劇なしに向いあえ」
表面上は華やかで幸福そうな人々ばかりに見えるモード界であるが、その中で働く人々の心の闇を考えざるをえない事件もときどき起きる。
メンズのミラノコレクション真っ最中の18日に、「バーバリー・プローサムの顔」として活躍してきたモデル、トム・ニコンが飛び降り自殺した、という記事。英「ガーディアン」21日付。22日には「インデペンデント」も同様の報道。
トム・ニコンはまだ22歳。ルイ・ヴィトン、バーバリー、ヒューゴ・ボスなどのモデルをつとめており、ヴェルサーチェのリハーサルから帰った直後、アパートの4階から飛び降りた。最近、ガールフレンドと別れており、それによる鬱が原因では、とのミラノ警察の報告。
ニコンばかりではない。以下、「ガーディアン」が報じた、最近のモード界における自殺および自殺未遂者。
先月にはマークス&スペンサーのモデル、ノエミー・ルノワール(30)がパリで自殺未遂。昨年11月には韓国のモデル、ダウル・キム(20)が首をつった。今年4月にはアメリカのモデル、アンブローズ・オルセン(24)が死亡。2月のアレクサンダー・マックイーンの自殺も記憶に生々しい。
4月にはコロンビアのモデル、リナ・マルランダが飛び降り自殺。2008年にはロシアのモデル、ルスラナ・コルシュノヴァがNYのアパートの9階から飛び降り自殺。
自殺する人はどの業界にもいて、プライベートな事情も多く関わってくるから、必ずしもモード業界の仕事によるストレスによるものと結びつけるわけにはいかない。でも、匿名のインサイダーのコメントから、モデルたちが受けるストレスの実態がうっすらと伝わってくる。
「オーディションに行くと、ディレクターたちが一目だけ見て、却下するんだ。その後ずっと、いったい自分のどこが悪かったのか、なぜ自分は仕事を得られなかったのか、と悩み続けることになる」
記事内に引用されていたジョルジオ・アルマーニの指摘が、重みをもって響いてくる。
「この業界はあまりにも若さを重視しすぎていて、22歳で人生が終わってしまうように思わせるのだ。私たちは、23歳以降もずっと人生は美しい、ということを若い人々に伝えなくてはいけない」
「絶望はどこにだってある。愛においても。でも、悲劇を招くことなしに、絶望と向かい合わなくてはならない」
帝王、アルマーニ75歳の言葉には力強い説得力がある。アルマーニはパートナーをエイズで失った後、絶望から立ち直り、独力で経営を学んで今の帝国を作り上げている。
死にたくなるような絶望と、悲劇なしに、向いあえ。きらびやかに見える業界だからこそ、求められるものも、厳しい。ニコンの冥福を祈る。
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