国の基本はどこに? その答えの一つを模索する映画
◇映画「フラワーズ」、公開に少しさきがけて観る機会をいただく。「TSUBAKI」の広告で名高い大貫卓也氏が企画・製作総指揮、「タイヨウのうた」の小泉徳宏氏が監督。蒼井優、鈴木京香、竹内結子、田中麗奈、仲間由紀恵、広末涼子、それこそTSUBAKIな女優陣が、3世代にわたるさまざまな日本女性を演じる。
蒼井優は小津安二郎風世界、田中麗奈はクレイジーキャッツ風世界、というふうに、各時代の女性を演じる女優は、それぞれの時代の映画のなかにワープしたよう。
テクニックはとても凝っているが、伝えられるメッセージは、シンプルなどまんなかの直球である。四季の折々の花のなか、心に傷を抱えながらも、つつましく覚悟を決めて一歩前へ踏み出す女性の、凛とした美しさ。日本人の命は、家族は、こうしてつながってきたのだ・・・・・・と国が砂漠のように殺伐としつつあるような今だからこそ、響いてくる。
支える男性陣も、さりげないのに強い印象を残す。蒼井優の父、仲間由紀恵の夫、田中麗奈の恋人。愛情表現は不器用だけど心根は誠実で優しいこんな男たちに支えられて、女たちは強くなれ、次世代に命をつないでいくことができた。
こういう「ど」シンプル&ストレートな映画がつくられるのも、不況の影響のひとつだろうか。よけいなものをクリーニングアップしてまずは原点を見つめてみよう、というムードを、モード界ばかりでなく、こんな映画世界にも感じ取ることができる。
バブリーな80年代に、過剰でシニカルで倒錯していた変化球映画たち(デイビッド・リンチ、ピーター・グリーナウェイ)の洗礼を受けた身には、ど直球はなかなか心のミットにおさまらないところもあるのだが、直球じゃないとメッセージが伝わらない時代、というのもおそらくあって、それがまさしく、「弱っている」人が多い今なのだろうな、とも感じる。そんな今を迷いながら生きる日本人に希望を届けたい、という作り手の姿勢に敬意を表します。
◇週刊文春書評欄掲載感謝。ささやかでも反響が途切れずに続き、苦労も報われるような思いです。
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