「本能についての恥じらいを抱いてこそ」
◇浅田次郎「アイム・ファイン!」(小学館)読み終える。いつもながらの浅田節を堪能しつつ、売れっ子小説家の華麗な生活(ヴェガス、馬主としての競馬観戦、中国ツアー、などなど)と職業病?(歩かないための肥満、狭心症)のオソロシさを擬似体験させていただく。とりわけ響いたフレーズを、以下にメモ。
「努力というものの限界。平常心を保つことの難しさ。場になじむことの尊さ。真摯と謙譲の精神。時間というものが実はかくも緊密であること。人の和が全能であり、しかし個がその和に依存してはならぬという掟。そしてそれらを複合した、未知の経験の貴重さ」。
(車内でモノ食う若者についての考察のなかで)「人は腹が減れば物を食わねばならぬ。しかしその本能についての恥じらいを抱いてこその人間ではあるまいか。移動中の車内で食事をするのは合理的だと考えられているのだろうが、礼を失した合理性ほど不合理な行いはあるまい。社会の規範が法律だけになってしまえば、人間は心なき機械と同じである」。
本能にまつわることは、やはり恥じらいを抱いてこそ人間。人前で眠る、人前で食べる、人前でいちゃつくことの、ぬぐいきることのできない下品さ、だからこそそれを克服している光景のかっこよさ、の理由はやはり、そのあたりに。
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