「財運が移る」
『売れる小説の書き方。』(エンジン01選書)読む。林真理子、大沢在昌、山本一力、中園ミホによる名古屋でのパネル講座を本に収録したもの。
通勤電車片道で読める分量で、「売れるハウツー」など、どこにも書いてない。ただ、それぞれの大作家の、このステイタスにいたるまでの大苦労話と、ちらりちらりと暴露される文壇内輪話が、下世話な関心をひく。
とりわけ、「え? こんな話を活字にしていいの?」と思ったのが、石田衣良さんにまつわる話。
「林: …… 石田衣良さん、売れてるじゃないですか。
大沢: うーん、でも彼は、あの中身のなさがすごいじゃないですか。
中園: アハハハハッ。
大沢: 本当に、素でもああだけど、お前本当に心がないね、ってよく言うんですけど。しゃべってることにまったく心がこもってないでしょう。あれ、素でもそうですからね。あれは、素を出さないから飽きられないんだと思う」。
「作家のテレビ出演問題」をめぐる話で、これだけ読むとたんなる悪口みたいだけど、決してそういうわけではないのである。むしろ、おそらく石田さんへの一種の愛があってこそ出てくる話で、「素を出さないから飽きられない」という稀有な具体例として印象深かった。
そのほか、お金持ちにお財布をもらうと財運が移るっていうことで、中園さんが林さんからドル&ガバの財布をもらい、林さんが秋元康さんからエルメスのクロコ財布をもらった話とか、宮部みゆきさんの服の上から下までの値段とか、俗っぽいエピソードばかりが記憶に残るような、妙になまなましい本だった。
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コメント
はじめまして。『愛されるモード』を拝読して以来、ときどきブログを拝見しています。石田さんの著作(小説、エッセイとも)は読むたびに、ご本人の、登場人物、あるいは読者に対する距離感、もしくは冷たさのようなものを感じていたので、「素を出さないから飽きられない」とのくだりに、なるほどと膝を打ちました。冷たさを感じつつも、本を手にとってしまうのですから、それこそまさに石田さんが「稀有な」作家であることの証明なんでしょうね。
投稿: キンバリー | 2009年11月29日 (日) 10時31分
拙著をお読みいただきましたとのこと、ありがとうございました。
いかなるスタンスであれ「代わりがいない」ステイタスを築くのは、それだけで大変なことであろうなあと思います。石田さんからお財布を頂戴したいくらいです(笑)。
投稿: nak | 2009年11月29日 (日) 18時10分