シャンパーニュの「ペリエジュエ ベルエポック」のシェフ・ド・カーヴ(最高醸造責任者)、エルヴェ・デシャン氏が来日、ディナーに招かれる@ラ・ベル・エポック in ホテルオークラ。
主役はあくまでシャンパン。ラ・ベル・エポックのシェフ、池田順之さんが、年代の異なる4種の「ペリエ・ジュエ ベルエポック」に合わせ、3皿の料理+デザート1皿を演出する。
華やかですっきりした2000年には、平目のマリネのバラ仕立て。
より厚みが感じられる1999年には、あかざ海老と魚介類のポワレ。なんとこの年のペリエジュエをまるごと一本使ったという贅沢なシャンパンソースで。
「当たり年」の1996年のマグナムには、トリュフが香るムースをつめた仔兎の背肉、バロティーヌ仕立て。
そして2002年のロゼに、文旦とシャンパーニュのゼリー。上にのっかるムースもシャンパーニュの泡をイメージしたもの。(写真はすべて主催者の了解を得て掲載)
ゲストには「ヴォーグニッポン」「ヌメロトウキョウ」「エルジャポン」「エクラ」「ドマーニ」各編集長、フードスタイリストやワイン評論家の方々など。シャンパン愛においてはいずれ劣らぬツワモノの、それぞれの視点からのシャンパン談義がなかなか印象深く、心身ともにすっかりシャンパン漬けになった一夜だった。
とりわけ、となりに座ったワインライターの葉山考太郎さんが、「今は清楚な女子高校生だけど数年たってヒミツをもつようになる頃が楽しみ」というような突拍子もない比喩を連発して、終始、笑わせてくれる。葉山さんはなんでも、ペリエジュエのワインセラーにある世界最古のシャンパン(1825年)を味わう世界の代表12人のうちのひとりとして当地へ赴かれたそうで、そのシャンパンの形容もすばらしいというかいかがわしいというか。
1825年のシャンパンともなると、もう泡など立たないのだという。むしろシェリーに近い味わいなのだそうだが、葉山さんいわく、「5分前には温かかったんだろうなあと思わせるベッドみたいに、泡の痕跡はたしかに感じられるんですよ」。
ベルエポック(20世紀初頭の、優雅なる時代)の情緒たっぷりの部屋には、5種類の異なる容量のボトルのペリエジュエが飾られる。通常サイズではないボトルの名前を、アジア太平洋地域ディレクターのヤン・スーネン氏が教えてくれる。1.5Lがマグナム(magnum)、3Lがジェロボアム(jeroboam)、6Lがマチュザレム(methusela)、そして12本分入るという9Lがサルマナザール(salmanazar)。 なんという意味か? と聞いたところ、葉山さんによれば、「聖書に出てくる王様の名前ですね。日本でいえばイザナミとかアマテラスオオミカミとか」。
帰ってから調べたら、ジェロボアムが聖書にでてくるヤラベアム1世または2世。マチュザレムが、やはり聖書に出てくるユダヤの族長メトセラ(ミシューズラーほか表記はいくつかあり)で、969年生きた長命者。サルマナザールが、紀元前8世紀のアッシリアの王。
はじめて知ったのだが、ボトルが大きければ大きいほど、割安になるのではなく、割高になるのだそう。理由は明快で、ボトルが大きいほど品質が高く保たれるため。だから、シャンパンの場合、ピッコロサイズになると「おいしくない」ことが多いらしい。……ピッコロサイズでの一人シャンパンがおいしくない理由は心理的なものではなく、単に物理的な理由である、と。
ボトルに描かれている花はアール・ヌーヴォーの画家、エミール・ガレによるもので、ヒントになったのは日本のアネモネ。そういえばベル・エポックというのはジャポニスムの影響が色濃い時代でもあったのだなあ・・・と100年前につらつら思いをはせる。
はじめて知ったことはほかにもあり、ワイン業界では「女性がロゼを頼むと、今夜は帰らなくてよい、という合図」となるんだとか。女性誌関係者は全員「えーっ!?」と驚いていたので、ワイン業界だけにまことしやかに流れている、男に都合のいい願望まじりの迷信なのかもしれない。でも、「ワイン通の間ではそういうことになっているらしい」と知っておくことで、誤解を避けるなりあえて誤解を招くなり、いろいろ戦略も立てられるかもしれない(?)
「ペリエジュエ」は今後、徐々に、「ベルエポック」という名で流通させていくという。たしかに、「ベルエポック」という名のほうが、このシャンパンのイメージをずばり表しているように感じる。
美味しく楽しくシャンパンのことを学べた一夜だった。主催者、関係者のみなさまに、心より感謝申し上げます。
☆☆
シャンパンついでに。このウェブサイトの上のほうにあるデザインは、「ペンの筆致」と「シャンパンの泡」のイメージを組み合わせたもの。デザインを依頼したアーク・コミュニケーションズ(社長の大里マリコさんが大学の後輩というご縁)のスタッフが、私の話を小一時間ほど聞いて、こういう図とロゴを考案してくださったのである(人影はもちろん、ダンディズムの祖、ブランメル)。具体的に何を話したかは覚えていないのだが、どうもイメージとして「シャンパンの泡」が欠かせないと思われたようなのであった。