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2009年3月

2009年3月31日 (火)

ハイパーレスキューと「マッチョ」取材の思い出

東京消防庁の方から、yorimoの広告を見た、がんばってください、という旨の留守電メッセージをいただいていた。東京消防庁とは細々とご縁が続いていて、「日本経済新聞」で消防服の記事を書くときに取材させていただいたり(「愛されるモード」に収録)、「ハーパース・バザー」での連載「落日のマッチョ」の記事を書くためにハイパーレスキュー隊の訓練の取材にご協力いただいたりした。2008年の総合防災展の「消防ファッションショー」のためのささやかなお手伝い(助言程度だが)をしたこともある。取材にうかがってそれっきり、というご縁が圧倒的に多いなか、覚えていていただき、こうして折にふれ、元気が出るようなお声をかけていただくのはほんとうにありがたく、あたたかい気持ちになる。

そういえば、「落日のマッチョ」シリーズのハイパーレスキュー取材は、近年もっとも印象に残っている仕事のひとつである。「バザー」の副編集長(当時)だった東野さんの、赤いポルシェに乗せていただいてはるばる訓練場まで行くと、赤い消防車に乗った隊員が、「すげー」とつぶやいていた(笑)。映画のセットのようにつくられたリアルな「現場」を再現した訓練スポットや、さまざまなハイテク装置、訓練の実際、「虎の穴」のようなトレーニングセンター、「放水厳禁」の張り紙つきのドアなどなど、いちいち、ここまでやるのか!と驚かされた。以後、ハイパーレスキュー隊のオレンジの制服をテレビなどで見かけると、思わず敬礼してしまうのだった。

ポルシェやアルマーニやエルメスがいやみなく似合う東野さんは、「どんなところかわからないから」と取材現場にあらかじめ下調査にも行ってくれたり、神楽坂の帝拳ボクシングジム(女子トイレがない)とか流鏑馬の組織とか、ふつうはあまり近づけないようなところにも独自のネットワークでさくさくと取材のアレンジをとりつけてくれた、すばらしく優秀な編集者でもある。「落日のマッチョ」は、東野さんのおかげで、思い出深い仕事になりました(HPのアーカイブで写真ごと全文掲載しています)。

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2009年3月29日 (日)

ローストダックとシンガポールフライヤー

観光名所になっている「ボート・キー」で食事でもしようかと出かける。ウォーターフロントの、まあそれなりにロマンティックではある場所に、インド料理、中華料理、シーフード、マレー料理、(なぜか)イタリアン、などなどの店舗がずら~っと並んでいる。テラス席はどこも布のテーブルクロスがかけてあり(あまり地元レストランらしくはない)、白人の観光客がちらほら座っている。

ぶらぶら散歩しながら店を決めようとすると、もう、あっちからこっちから、わんさと寄ってくる、勧誘が。「フリードリンクネ、タイガービール、タダ!ノミホーダイ!」(もちろん日本語だと思う)、とか、「30%ディスカウント、ゼーンブ!」とか、誘拐せんばかりの勢いで腕をつかまれ、店に連れ込まれそうになる。

やば、と思って、「メニュー見せて」というと、一品のLサイズが30ドルとか40ドルとか、Sサイズで12ドルとか15ドルとか(シンガポールドル。1シンガドルは約65円)。ここの生活水準にしてはありえない。これじゃあフリードリンクでも30%オフでも店側はぼろ儲けだろう。

いらない、とふりきって、一本奥の通りに逃げると、ここは地元の人たちが普通に食事をするようなところで、すごくエキサイティングだった。中華、インド、マレー、シーフード、地元の人が、日常に食べているものがずらり。

Photo ローストしたての鴨がぶら下がっている店を選び、ダックライスやダックヌードル、野菜の炒め物などを頼む。ちなみにダックライス一人前は4ドル(260円ほど)。浅黒くスリムなシンガポール美女(仕事帰りの様子だった)たちと一緒のテーブルで食べるダックヌードルはめちゃくちゃおいしかった。ただ、アルコールを出さない店だったので、カクテルコンテストの審査員までやってしまう超のつく酒愛好家としては、タイガービールなしの夕食はやや物足りなかったのであった。

日本語も英語もあまりよく通じなかったが、メニューの絵を指さしつつ、目と手と心(?)で会話してなんとか。帰り際、チップのつもりでお釣りの中から50p(30円ぐらい)を置いていったら、店員が「お客さん、忘れ物!」みたいな形相で追いかけてきて、にこにこして返してくれた。観光地化したホーカーズ(屋台がたくさん並んでいるところ)や有名レストランでチップはあたりまえに受け取ってくれても、こてこてのローカルレストランではそんな習慣はないのか。

ホテルに帰り、シャンパーニュを飲み、刻々と色が変わる華麗なシンガポールフライヤーを窓から眺めながら、今このひと時に濃く浸る(でも、何時間か止まってしまったことがあるというあの大観覧車には、あまり乗りたいとは思わない)。Photo_2

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2009年3月28日 (土)

ラッフルズアーケードとジョー・マローン

ラッフルズホテルのショッピングアーケードは「異国での買い物」気分が高まる大好きな場所で、人も少なく、選び抜かれたいい物しか置いてないので徒労感を覚えることなくゆったり効率的に買い物できるところが気に入っているのだが、今回いちばん楽しみにしていたスーパーニッチな香水専門店がなくなっていた。 軽くショック。

その後、オーチャードロードの高島屋SCに行ったら、なんとJo Malone を発見!なんでも2週間前にオープンしたばかりなのだとか。ラッキーであった。日本へ帰れば伊勢丹でも買えるのだけど、なんだか嬉しくなって、知人の娘さんの大学進学お祝いだとか友人へのお礼だとか誕生日プレゼントだとか一つ一つ理由を考えてスモールボトルを何本か購入。フレグランスを贈るのは相手の好みもあって難しいことも多いのだが、ここのは天然の上質な香料ばかりを使っているためか、予想以上に喜んでいただける。贈る相手の顔を思い浮かべながらあれこれ試香して、イメージにぴったり重なるようなものを見つけるのは、なんとも楽しい。

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2009年3月27日 (金)

マンダリン・オリエンタル

Singapore_3 7度目ぐらいのシンガポール。というと頻繁に出かけているみたいに聞こえたりするが、まったくそうではなく、他国に行かずにただここばっかりというだけ。気候がよく安全で清潔で物価は安くショッピング天国。多民族国家の猥雑なエネルギーとハイテクの恩恵、ともに享受できる環境がありがたくついリピーターに。いいホテルもよりどりみどり、飽きることがない。

今回はマンダリン・オリエンタルに宿泊。グローバル<クール>スタンダードの最先端、といった感があって、モダン中国と西洋のいいとこどりをしたかっこよすぎるインテリア、細部まで繊細にいきとどいたもてなしに、いちいち感心する。 Singapore_4

惜しまれるのはバスルーム。たぶん、お隣のリッツカールトン・ミレニアと比べてしまってるからかもしれないが、なんだか狭く、バスタブも小さく感じられる。とはいえ、一面ガラス張りのリッツカールトンのバスルームと比べてはフェアではないかもしれない。

アメニティはElemis。高級スパ御用達の、イギリスのいまどきブランド。都会派エスニックアロマ系の、ほどよくスパイシーな香りは、気温30度の中で香っても暑苦しくないどころか、快い。日本の夏にもいいのではないかと思う。全館、スパから漂うほどよくいい香りで癒される。

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2009年3月25日 (水)

ジュン アシダの秋冬コレクション

例年、グランドハイアットでのショウでしたが、今回は代官山の本店でのサロンショウ。モデルの息遣いや衣ずれの音まで聞こえる、かぶりつきのサロンスタイルも親近感を抱くことができてなかなか素敵でした。

いつもながらのエレガントで気品あるスタイル、とりわけワンピースとコートのアンサンブルに目が奪われました。社員のみなさんのもてなしもほんとうにあたたかく、いやみなく丁寧で、美しいものをつくるブランドの基本力のようなものを教えられます。

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2009年3月22日 (日)

サステナブルな衣生活

「グラッツィア」の巻頭エッセイ(私の部屋の美しいもの)の題材を求めて、実家にお宝探しに行く。幼少時からずっと目にしていた懐かしい人形や置物やアートがそっくりそのまんま保管してある、というか飾ってある。どれを選ぼうか、最後まで迷ったのだが、結局、それにまつわるストーリーを語れる写真も発見できた、世界にたったひとつのあるモノに決定(詳しくは誌面で)。

ついでに出てきた、40年以上も昔の写真の数々に、つい時間を忘れて見入ってしまう。母と、4,5歳ぐらいの私は、いつも同じ服地の服を着ている。母が自分でつくった服のハギレで、私の服も縫っていたらしい。母が着ていたニットと同じ色のニットを、2年ほど後の私や弟が着ていることもある。編み物が得意な叔母が、母のニットの糸をほどいて、私や弟のために編みなおしてくれたものだという。昭和30~40年代は、新しい既製服を子供に次々と買い与えることができる現代よりも、はるかにサステナブルで豊かな衣生活を送っていたのかもしれない。

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2009年3月20日 (金)

新しいフロントロウの女王は・・・

各都市でのコレクションがいったんひと段落。今期もっともひっぱりだこだったフロントロウのスターはといえば・・・

どうやらベス・ディットーのようである。

アメリカのパンクロックグループ「ゴシップ」のヴォーカリストで、思いきり巨漢。ヌード写真が雑誌の表紙を飾ったこともあれば、レズビアンであることも広言している、「ありのまんま」でニュースな迫力のある女性。いつも同じような顔ぶれが集まるソサエティのなかでは、気取った空気にどかんと風穴をあけてくれるようなこんな痛快な人がもてはやされるらしい。

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2009年3月17日 (火)

ダンディズム対談と、チャーチル、ラ・ロシュフコー

休店日のトゥールダルジャン(代官山の物販店のほう)でピーター・バラカンさんと「ダンディズム」に関する対談。現代のイギリスの階級意識についても、イギリス人ならではの感覚を教えていただく。気さくでやさしく、頭の回転がとても早い方である。詳細は4月にウェブマガジンopenersで公開予定。

その後、代官山スタジオで「プレシャス」(小学館)の取材を受ける。「励まされる言葉」がテーマ。河合秀和先生によるウィンストン・チャーチルの伝記と、ラ・ロシュフコーの箴言集『運と気まぐれに左右される人たち』を持参し、結局、チャーチルの伝記と一緒に写真を撮ることになった。この本は、『ダンディズムの系譜』のチャーチルの項目でもメインに活用させていただいたのだが、なにもうまくいかなくて落ち込みがひどいときに、エネルギーをチャージしてくれる強壮剤のような本でもある(あくまでも私にとって、ですが・・・)。華々しい経歴が綴られるチャーチルだが、実は成功よりも挫折をはるかに多く経験している。「成功とは、失敗に失敗を重ねてもなお情熱を失わないこと」をはじめとするチャーチルの人生の重みを背負った言葉の数々には、どれほど救われたか。

ロシュフコーの箴言集も、3冊ぐらい買った(頭に叩き込んでおきたい言葉は線を引いたりして、ぼろぼろになるので)。裏切りだの謀略だの(三銃士が活躍する「フロンドの乱」もそのひとつ)に巻き込まれて心身がぼろぼろになった貴族たちにもウケた言葉だから、辛辣ながら的確に人間の心理の真実をついていて、矛盾だらけの心理を学びながら笑い飛ばせる。裏切られただの失望させられただのといちいち傷ついたり怒ったりしていては、身も心ももたない。17世紀からまったく変わらぬ人の心のシビアな仕組みを知っておくのは、大人の女のたしなみである、と思う。

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2009年3月14日 (土)

ヤッターマン

三池崇史監督色が随所に出てきて(とりわけ、どくろべえの口から阿部サダヲが出てくる「牛頭(ごず)」風グロテスクとか、少女ヒロインいたぶりとか、くだらないギャグすれすれの言葉遊びとか、感動の別れのシーンのあとに父娘を山頂から落っことしてしまうアナーキーとか)、こってりしたばかばかしさ(←もちろん、ほめことば)を堪能する。子供向けを装いつつ(装ってない?)、相当きわどかったり、すれっからしの大人にしか笑えないようなシーンがちらほら。

深田、生瀬、ケンドーコバヤシのドロンボートリオによる天才ドロンボーの歌(シュールな振り付けつき)は強烈で、頭にこびりついて離れない。ドロンジョの手足のどくろネイルの細かさも笑える。DVDになったらもう一度見たい。

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2009年3月12日 (木)

ある公爵夫人の生涯

パラマウントで試写。原題は"The Duchess"で、昨年、英国のメディアで話題になっていた。ダイアナ妃の祖先でもあるジョージアナ・スペンサー、デヴォンシャー公爵夫人の生涯を描いた18世紀コスプレ伝記映画。

主演がキーラ・ナイトレイ、冷血夫役にレイフ・ファインズ、ママ役にシャーロット・ランプリングと配役はすばらしい。コスチューム、ヘア、メイクの時代考証も的確で、その変遷がきめ細かく再現されている。重厚で華麗、観ごたえあり(祝・アカデミー賞衣裳デザイン賞)。Duchess_2

それにしても、ジョージアナが耐えねばならなかった試練が想像を絶する。ダイアナ妃の「不幸」なんて目じゃないくらいの、結婚生活の地獄。はらわたが煮えくりかえるとか絶望のどん底で内臓がはりさけるとか、そんなレベルの表現も足りないくらいの、これでもかという残酷な試練を、ジョージアナはすべて呑みこみ、社交界で優雅にファッションリーダーとして振る舞うのである。予告編でダイアナの顔を映すことが物議をかもしてはいたが、「英国中に愛され、子供たちに愛を注ぎながら、ただひとり夫にだけは愛されない、美貌のカリスマ的ファッションリーダー」という立場は、やはりダイアナ妃を連想させずにはおかない。実際、キーラはときどきおそろしいほどダイアナ妃にそっくりの表情を見せる。

英国文化史的に見れば、「アール・グレイ」の名の由来になった首相とかシャンデリアの火が燃え移ることによる火事とか、バースの三日月建築とか、語りたいことはつきないのだが、英国史の知識がなくても、ボディス・リッパーの要素を満載したメロドラマとして感情をゆさぶられます。

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2009年3月10日 (火)

地球環境問題と経済不況がファッションに及ぼす影響

宮内淑子さんが主宰する「21世紀ナヴィゲーターズ・フォーラム」でスペシャルスピーチ。

「地球環境問題と経済不況はファッションにいかなる影響を及ぼしているのか」というテーマで、21世紀に入ってからファッション界に起きている現象を話す。経済界で大きな役割を担っている方々ばかりを前にこんなミーハーな話題でどうしようかと思いましたが、皆さんとてもにこやかに聞いてくださいました。ほっ。心から感謝します。

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